内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
業績紹介のページ

Copyright c 2002 ふきあげ内科胃腸科クリニック Allright reserved.
HOME

 
経皮内視鏡的胃瘻造設術 術後急性期に見られた感染性合併症の経験
−術後処置の差について −
蟹江治郎 河野勤 河野和彦 赤津裕康 山本孝之 下方浩史 安藤富士子 井口昭久
第40回 日本老年医学会総会 1998/06/17

【目的】
 経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下PEG)施行後の急性期感染性合併症は、主として創部感染症と呼吸器感染症などである。今回我々は、高齢者に対してのPEGの術後処置が、これらの合併症に対し、どれほどの影響があるかについて検討したので報告する。
【対象と方法】
 平成4年9月より平成9年9月までに、名古屋大学医学部老年科と、その関連病院にて合計330回のPEGが行われた。うち65才以上の症例は261名であり、それらの症例において、術後抗生剤の投与の有無及び、術後経腸栄養剤の開始時期の差により合併症の頻度に差がないかを検討した。術後、抗生剤の予防投与に関しては、投与を行った群(以下AB(+)群)と、行わなかった群(以下AB(-)群)の2群に分けて検討した。
 また、術後経腸栄養剤の投与は、術後5日目より通常の経腸栄養剤の投与を開始した群(以下group I)、術後1日目より5日目まで無菌の経腸栄養剤(点滴用の乳酸加リンゲル液を使用)を投与し、その後通常の経腸栄養剤の投与を開始した群(以下group II)、術後1日目より通常の経腸栄養剤の投与を開始した群(以下group III)の3群に分けて検討した。施行回数は、AB(+)群169名、AB(-)群92名、group I 76名、group II 112名、group III 73名であった。
【結果】
 急性期感染性合併症の発生は合計75回であり、うち創部感染症が20回、術後呼吸期感染症が19回といづれも高頻度であった。
創部感染症の発生頻度は、AB(+)群13名、AB(-)群7名と抗生剤使用の有無での有意差はなかった。経腸栄養開始時期ではgroup I 4名、group II 1名、group III 15名で、group IIIは他の群に比して有意に高率であった。
 術後呼吸期感染症の発生頻度は、AB(+)群9名、AB(-)群10名とAB(-)群の方が高頻度の傾向があった。経腸栄養開始時期ではgroup I 5名、group II 8名、group III 6名で有意差はなかった。
【考察】
 術後、経腸栄養剤投与を遅らせることは創部感染の発生頻度を減少させた。また、group IIの如く滅菌した経腸栄養剤の投与は、術後早期からの投与を行っているにも関わらず、創感染の抑制に関して絶食群と同様の効果があった。また術後抗生剤の投与は、呼吸器感染症の発生を減少し得たが、創部感染に対しての効果はなかった。
 

学会発表一覧へ戻る