内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
業績紹介のページ

Copyright c 2002 ふきあげ内科胃腸科クリニック Allright reserved.
HOME

 
内視鏡的胃瘻造設術の合併症と有用性について
蟹江治郎、前田豊,水林竜一、伴和彦、河野和彦,大谷由一,井口昭久
第一回 HEQ研究会 1996/07/31

【目的】
 近年わが国では,世界に類を見ない超高齢化を背景に寝たきり老人の人口も増加の一途をたどっており,その多くは意識障害や嚥下障害を有している.従来この様な症例に対しては,経鼻胃管による栄養管理が行われていたが,経鼻胃管の長期留置は様々な問題を有するため,在宅での管理を困難にしている.近年,欧米においてその問題を解決すべく,経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下PEG)が開発され,容易かつ侵酬が少ないため現在普及しつつある.
 今回我々は,現在までに合計228回のPEGを行っているが,その合併症と有用性について評価する目的で,急性期および慢性期における合併症の発生頻度及び,術後の抑制状態や意識状態の変化について検討したため報告する.
【対象と方法】
 平成4年9月より平成7年9月までに,名古屋大学医学部老年科およびその関連病院にて,216名(男性89名,女性125名,平均年齢74.6才)に対し計228回のPEGを行った.施行不能者は5名,再施行者は12名で施行可能回数は223回,施行可能症例数は211名であった.
【結果】
 PEGの合併症には、その重症度からmajor complicationとminor complicationに分類される。我々はそれらを更に整然とするために,急性期と慢性期,感染に関連したものとしないものと更に詳細に分類している.以下にその頻度を示す.
 major complicationの3例は,汎発性腹膜炎2名,重症肺炎1名で後者は術後9日目に死亡された.急性期感染に関連したminor complicationで多いものは皮下膿瘍及び嚥下性気管支炎であり,感染に感染しないものとしてはバルーンバーストや胃壁損傷等カテーテルトラブルによるものが主であった.慢性期のminor complicationでは,嘔吐回数の増加を示す例が多かった.
 また,抑制 処置を行っていた131名中抑制 処置が緩和し得た症例は27名,中止し得た症例は67名であった.発語量の増加等,意識状態の改善をみた症例は104名で,うち経口摂取が可能になった症例は21名であった.
【結論】
 PEGは安全に行いうると言う意見が一般的であるが,実際の経験において,その合併症は希なものではなく,特に経鼻胃管で安定している症例に対してのPEG施行においては,家族への十分な説明とinformed consentが必要であると考えられた.しかし,いざ術後安定してしまえば,経鼻胃管と比較にならないほどの有用性がある経管栄養投与法であった.
 

学会発表一覧へ戻る