|
老年者に対する内視鏡的胃瘻造設術における
「経皮的胃壁固定術」の施行経験について
蟹江治郎,三浦 悟,内藤通孝,吉峯徳,井口昭久
第35回 日本老年医学会総会 1994/10 |
|
|
経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下PEG)は1980年にPonskyらより発表されて以来数種の手技が報告されているが、合併症についても数多く発表されている。その中でも重篤なものの一つとして術後の胃壁と腹壁間の離開に基づく腹膜炎がある。我々はその合併症の発生予防の目的で「経皮的胃壁固定術」を行った後に胃瘻造設を行ない、その有効性について検討したので報告する。
(対象)
嚥下困難を認める症例42名(平均75.1才)に対し内視鏡的胃瘻造設術を行なった。その内26名に対し経皮的胃壁固定術を施行し、非施行例の他の16名と比較検討した。
(器具)
クリエートメディック社製経皮的胃壁固定具を使用した。これは糸把持用ループを収納した20Gの糸把持用穿刺針とそれと並行した糸挿入用穿刺針を一体化したもの(以下胃固定具)である。
(方法)
まず仰臥位にした患者に内視鏡を挿入し、胃内に十分送気することにより胃壁と腹壁を密着させる。次に穿刺部位を決めて局所麻酔を行い、胃固定具を穿刺し内視鏡で2本の穿刺針が胃前壁を貫通する事を確認する。続いて糸把持用穿刺針より糸把持用ループを出し、次に糸挿入用穿刺針より糸を出すと、その糸は糸把持用ループを通過する。そして糸把持用ループで糸を把持し、胃固定具ごと体外へ抜去すると、2本の穿刺針の穿刺部より糸が体外へ誘導される。最後に腹壁外へ露出した糸を結紮すると胃壁と腹壁が固定される。同様の事をもう一点で行い2点間の中央を穿刺し、胃瘻チューブを挿入する。
(結果及び考察)
経皮胃壁固定術は容易で、患者に対する侵襲も最小限で行いうる手技である。老年者に対する胃壁固定具使用下でのPEGは、1.バルーン使用下PEGにおいて急性期バルーンバーストによる胃壁と腹壁の離開による合併症を予防できる、2.PEGによる胃壁穿刺またはダイレーションを行う時の胃壁陥入を起こさなくなり手技がより容易になる、などの点で極めて有用である。
|
|
|