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医療現場で有用な粘度測定方法とその表示について
  用語ワーキンググループ   飯島正平、蟹江治郎、合田文則、西口幸雄
第4回 日本栄養材形状機能研究会 学術集会    2017/09/30 
 

 【目的】
 用語ワーキンググループ(WG)では、これまで形状を変化させた栄養材の物性評価として用いられてきた粘度について、医療分野に有用な粘度測定方法やその表示を議論し提案してきた。前回の研究会後もご意見を頂き、引き続き検討したので報告する。
 本WGでは、在宅を含む医療現場において関係する職種だけでなく、患者自身やご家族などすべての方を対象に、臨床に役立つ粘度の測定方法と統一した表示の提案を目指している。粘度はJISにも収載されているように多くの科学技術及び産業分野で活用される指標である。本WGでは、形状変化を科学的に臨床医学として研究し、いまだ未熟なエビデンス構築のために、主として医療現場に限定したものとして貢献できる表示について議論している。他の物性領域の先端科学や栄養材以外の産業分野とは異なる測定条件や表示となる場合も便宜的にあり得るが、その場合には大きく逸脱することがないよう相違点による課題を常に把握しつつ定期的に再検討・修正することとが必要と考えている。したがって、粘度測定や表示について本研究会提案では臨床現場以外まですべて統一し規格化する主旨ではないことをご理解頂きたい。
 一方、医療現場での形状変化は当初の手作りから製品化(工業化)へ変わりしつつあり、物性測定技術の発展によって粘度においても精度向上や連続測定が可能となっており、加えて遠い存在だった動的粘弾性などの物性測定が次第に身近となっており、本WGでも議論してきた。形状変化栄養材製品の製品開発にあたっては旧来の粘度だけでなく、より有用な物性指標についても十分な検討・議論頂いて、製品の質を担保しつつ、より臨床効果の高い製品開発を目指すべきと考える。
【結果と考察】
 1. 粘度計について;円錐‐平板型回転粘度計(E型)が測定に望ましいが単一円筒形回転粘度計(B型)でも差し支えないと提案した。均質なずり速度で結果が安定し測定可能範囲が広いE型を第一とした一方、B型では測定可能範囲が低ずり速度に偏り測定前処理や測定時ずり速度や容器により結果が変動するが、普及の実態から配慮した。ただし、これらは均一な試料を前提としており、現場でニーズの高い不均一な場合の評価方法は未知のままである。臨床的には消化管蠕動応力による栄養材流動性の評価指標が必要であり、栄養材物性を事前評価した上で、適切な測定機器により現実的な幅のずり速度帯において複数ポイント測定が現時点では有用であろうと考えられる。臨床的意義の高い測定手法として、今後の議論される領域である。いずれにせよ、どのような場合でも測定結果の解釈にはその条件は詳細に提示されなければならない。
 2. 測定容器について;B型の場合、サンプル量(測定容器)は200mL(200mLビーカー)を提案した。JIS規格ではB型は外径約90mmの500mLビーカーとされるが、この口径では測定容器側面抵抗が及びにくく測定値に明らかに影響する上、対象製品の用量が500mL以下であることが多いため用量500mLでは継ぎ足しが必要で、均質性や効率性の面からの課題が未検証である。ただし、前回提示の口径の短い200mLビーカーにおいては継ぎ足し不要ではあるが、JIS規格外なため機器における補正係数の記載もなく、汎用性が課題となる。JISでの一般的な粘度数値の考え方と大きく乖離しないことも必要と考え、容器はB型ではJISと同一規格の500mLビーカーともに、当初尊重した現状の製品測定時には500mL以外の少ない用量容器が用いられている実態を考慮し、先の提案通り200mLビーカーも併せて測定することを提案したい。今後、製品ではJIS規格と200mLビーカーを用いた測定値が示されるため、その相関性が検討できるものと推測される。その際再検討すべき点である。
 3. 測定時間について;測定時における粘度計の回転時間はE型で1分、B型で2分と提案した。回転粘度計では安定流動に一定時間を要する一方、組織をすり潰し破壊しながら回転するための危惧もある。したがって、時間設定が必要であり、回転開始の粘度変化についてはチキソ性など別観点から議論するとして、本研究会での粘度は測定値がほぼ安定する上記の測定時間とした。
 4. その他(ずり速度、栄養材の前処理について);測定時のずり速度範囲は2〜20sec-1、経口投与を想定するなら2〜50sec-1を提案しているが科学的根拠は少なく、議論が残る。今後の研究成果により再検討すべき点である。また、前処理段階では消化管内の状況に最も近い条件での測定に努めるべきであり、実際の投与状況を意識した測定を啓発したい。ただし、チューブ長や口径(含む接続部形状)は粘度測定に大きく影響しなかったため、条件には加えておらず、その後新たな知見も得られていないことから、本提案の見直しは行わなかった。
 以上を踏まえて、今回の提案を最終として本研究会で提示させて頂き、あらためて評価された。そして、今後の研究の進展とともに必ず見直しを願うものである。

 

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