内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
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完全理解! 寒天半固形化栄養投与法
- 寒天で半固形化を始めた理由,今でも寒天を用いる理由 -
蟹江治郎
第6回日本静脈経腸栄養学会 近畿支部学術集会 特別講演  2010/07/26
 経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下PEG)は簡便に実施可能であるが,その合併症は希ではない.またPEGの合併症は,単なる偶発症の場合のみならず,不適切な管理により発生する場合もある.そのためPEGに携わる医療従事者は,本法に対して充分な知識を得て管理をすべきである.
 PEGの瘻孔完成後合併症としては,瘻孔からの栄養剤の漏れである栄養剤リーク,そして嘔吐が頻度の高いものとしてあげられる.また,経管栄養としての合併症として,下痢も頻度の高い合併症であり,それらをもってPEGの3大合併症と形容される.それらの合併症を管理する上で,まずその原因の鑑別診断を行い対処する必要がある.その原因は様々であるが,共通したものとして,栄養剤が液体であることによる,流動性の高さにより発生する問題があげられる.注入する栄養剤がすべて液体の場合,その流動性の高い形状のため,噴門,幽門,瘻孔を通過しやすく,胃食道逆流による嘔吐,下痢,栄養剤リークの原因となる事が知られている.
 筆者は瘻孔完成後において頻度の高い胃食道逆流,下痢,栄養剤リークに対して,寒天を用いて栄養剤を半固形化した“寒天半固形化経腸栄養”を利用した対処法を行っている.本法で用いる栄養剤とは,液体の経腸栄養剤を寒天によりゲル化を行い“重力に抗してその形状を保つ程度の固さ”としたものである.この物性調整により栄養剤は胃瘻より胃内へ注入した後に,食物を咀嚼嚥下した胃内容物と同様の形状となる.その結果,液体経腸栄養剤に比較して流動性が低下し,胃瘻症例でみられる胃食道逆流による嘔吐や嚥下性肺炎,下痢,栄養剤リークなど合併症の軽減が可能となる.
 栄養剤を半固形化するに当たっては,さまざまなゲル化剤や粘度増強剤がある.寒天は付着性を上げることなく硬さを得ることにより,栄養剤の形状変化による効果を得るのが特徴である.付着性を上げずに注入可能な物性は,用手注入を容易にするので,注入に当たっては特殊なデバイスを必要としない.また,寒天は海藻由来の食物繊維であり,人工胃液で撹拌を行っても,粘度増強剤による半固形化と異なり溶解することなく固形成分が保たれる.さらに食物繊維は便の軟化と容積の増大により,便通を改善させる効果も得られる.つまり,寒天による栄養剤の半固形化は,単に物性を変化させるのみならず,寒天に由来するさまざまな効果も得られるということである.
 

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