内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
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固形化経腸栄養剤の投与により胃瘻栄養の慢性期合併症を改善し得た1例
蟹江治郎 各務千鶴子 赤津裕康 山本孝之 葛谷雅文 井口昭久
第7回 HEQ研究会  2002/09/07

【緒言】
 今回我々は,経腸栄養剤を固形化することにより,PEG造設術後にみられた胃食道逆流に起因する症状と,胃瘻チューブ挿入部からの栄養剤リーク(以下リーク)が改善した症例を経験した.よって,この経腸栄養剤の固形化が,経管栄養症例の合併症軽減のために有意義であると考えたため報告する.
【症例】
 症例は85才の女性.脳梗塞後遺症のため嚥下困難を来し,胃瘻栄養管理を受けていた.脳梗塞発症後,状態の安定化にともない介護老人保健施設へ入所した.
【入所後経過】
 入所後1年間は状態は安定していたが,1年を経過した後から経腸栄養剤の流涎に加え,リーク,嘔吐,発熱,栄養剤注入時の酸素飽和度90%未満の数値を伴う呼吸困難様症状,肺炎を反復して認めた.それらの症状の中で最も高頻度であったものは流涎で,次いで高頻度であったのはリークであった.また経腸栄養投与時には苦悶様表情や不穏状態をしばしば認めた.それら有症状時には介護老人保健施設で可能な範囲内の診察治療と,総合病院への通院検査治療により経過を観察していたが,合併症も頻回となったため,その防止のために固形化経腸栄養剤の投与を開始した.
【結果】
 固形化経腸栄養剤の投与開始後は,発熱以外の症状が固形化経腸栄養剤の投与直後より消失し,発熱も投与後2週間で消失した.また液状経腸栄養剤注入時に認められた苦悶様表情や不穏状態も,固形化経腸栄養剤の投与後より認められなくなった.
【考察】
 従来の経管栄養投与法においては,その注入が簡便に行えることから液体の経腸栄養剤が使用されてきた.しかし栄養分の全てを液体として摂取することは非生理的であり,様々な合併症の発生の原因ともなっている.また液体経腸栄養剤はその合併症の予防のために緩徐な注入を行うが,その注入法では胃壁の伸展は得られないため,胃蠕動を惹起しにくいという問題を持っている.今回我々は,経腸栄養剤を固形化することにより,慢性期の合併症である胃食道逆流と栄養剤リークの軽減効果が得られた.また管理面においても,栄養剤を短時間で注入が行えることから,褥瘡の予防や介護負担の軽減が期待できるものと考える.
 

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