内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
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Pull法またはPush法による経皮内視鏡的胃瘻造設術手技の工夫
- チューブ位置確認を目的とした内視鏡再挿入の必要性に対する検討 -
蟹江治郎 赤津裕康 山本孝之 井口昭久
第59回 日本消化器内視鏡学会総会 2002/04/20 山梨

【目的】
 Pull法またはPush法によって経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下PEG)を行う際、原法ではチューブの設置を行った後に再度内視鏡を挿入する必要がある。この2回目の挿入は胃内固定版が正しい位置に設置されているかの確認の目的で行われている。今回我々は過去にPEG施行症例の経験より、内視鏡の再挿入を行うことによる胃内固定板位置確認の必要性について検討を行い、その手技の省略の可否についての可能性について考察を行った。
【対象】
 平成4年10月から13年5月までに、Pull法またはPush法にてPEGを行った430症例について対象症例とし検討を行った。それら症例のうち、従来の方法である2回目の内視鏡挿入により胃内固定板の位置確認を行った症例は、Push法での造設を行い始めたときの3名のみで、以後に行った430名の症例については2回目の挿入を不要と判断し、内視鏡による胃内固定板の位置確認を省略して造設手技を完了した。内視鏡1回挿入のみの症例における胃内固定板の確認は、@PEG挿入部の位置決めの際、いわゆる「指サイン」による確認を充分行う、A局所麻酔を行う際、その刺入針で体表面から胃粘膜までの距離を測定する、B胃瘻チューブ設置の際、チューブにマーキングされている目盛りが体表面-胃粘膜間距離と同一であるかを確認する、といった三点を遵守して行った。
【結果】
 内視鏡1回挿入で胃瘻造設を完了した430症例のうち、PEGに先立って経皮胃壁固定を併用した症例は391名、併用しなかった症例は39名であった。術後早期合併症は計122名(28.4%)に認め、内チューブ位置異常に伴う胃壁腹壁間離解により発生する合併症としては、汎発性腹膜炎2名と限局性腹膜炎1名を認めた。汎発性腹膜炎の内1名は、経皮胃壁固定を行っていたため胃壁腹壁間の粗血を防ぐため意図的に固定が緩められており、何らかの理由で固定糸が外れた事が発症原因となった。他の2名は、発症時にチューブの位置が本来の造設時の位置からスライドしており、不意に胃壁腹壁間離解を生じた事が発症原因となった。
【考察】
 Pull法またはPush法によるPEGは1回目の内視鏡挿入でチューブを挿入し、2回目の挿入で胃内固定板の確認を行う方法が一般的である。しかし仰臥位で内視鏡挿入を行うPEGにおいて、内視鏡の挿入は嚥下性呼吸器感染症の誘因となる。また2回目の内視鏡挿入は患者の苦痛を増やし、手技も煩雑となる。今回の我々の結果では、造設時の簡便な工夫により内視鏡を挿入しなくても胃内固定板の位置確認が容易に行え、合併症を起こした症例が内視鏡による確認の簡略化によって発症したものとは言えないため、安全性を損ねる事はなかった。よって今回我々が行った、2回目の内視鏡挿入を行わないPull法およびPush法によるPEGは、従来の方法に比して安全で苦痛の少ない優れた方法であるものと考える。
 

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