内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
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高齢者に対する内視鏡的胃瘻造設術の経験
 −胃瘻造設後、胃潰瘍を発生した症例に対しての検討−
蟹江治郎、河野勤、大澤雅子 赤津裕康、山本孝之 下方浩史、安藤富士子 井口昭久
第42回 日本老年医学会総会  2000/06

【目的】
 高齢者に対しての経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下PEG)の術後合併症のうち、しばしば重篤な状態となりうる胃潰瘍が発生した症例について、その発生機序と増悪因子についての検討を行ったので報告する。
【対象と方法】
 平成4年9月より平成11年12月までに、名古屋大学医学部老年科と、その関連病院において65才以上の高齢者例に対してPEG を行った症例は計342名である。その症例のうち、術後内視鏡検査を行った症例は81名であり、それらの症例について検査時に挿入されていた胃瘻チューブの種類、H2blocker使用の有無、転帰について検討した。胃内チューブの種類は、胃内バンパーからのチューブ突出が5mm以上あり胃後壁に鋭的に接触する群(以下groupT)と、チューブ突出が5mm未満で胃後壁に鈍的に接触する群(以下groupU)の2群に分類を行った。
【結果】
 対象となった症例の中で、胃潰瘍を発生していた症例は計8名で、全症例においてその病変は胃瘻チューブの接触する胃体部後壁側であった。発見時に挿入されていたチューブの種類では、groupTで18名中6名(33.3%)、groupUで63名中2名(3.2%)で、前者の群において有意に高頻度に胃潰瘍の発生をみた。検査時にH2blockerを使用していた症例は、groupT、groupUとも各1名で何れも胃潰瘍の発生はなく、H2blocker使用により胃潰瘍発生の予防効果は確認できなかった。診断後の転帰では、groupT使用症例において胃潰瘍が発見された後、プロトンポンプ阻害剤の内服治療のみで経過観察を行うも診断後も病変の悪化を認めた。一方、groupT使用症例において胃潰瘍が発見された後、内服治療と共にチューブをgroupUの形式に変更した例では病変の改善が認められた。
【結論】
 胃瘻術後に発生する胃潰瘍は、その前症例がチューブ接触部であることから、接触に伴う刺激により発生するものと考えられる。そのためその発生の予防には、groupUのごとく胃後壁に鈍的に接触する胃内形状のチューブを選択すべきと考える。
 

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